鮭はなぜ、生まれ故郷の川に戻ってこられるのか

川で生まれ、海で3〜4年過ごして大きく成長したサケは、
再び川へと戻ってきます。
なかには、2年で戻ってくる気の早いものや、
6・7年も戻ってこないのんびり屋もいるが、年数の差はあれ、
戻る川を間違えることは決してないのがサケの不思議です。
石狩川で生まれたものは石狩川へ、
千歳川で生まれたものは千歳川へ、
迷うことなく、自分の生まれ故郷の川へ戻ってくるのです。
このサケの遡上は「母川回帰」と呼ばれていますが、彼らが母川へ帰ることができるのは、
サケが母川の匂いを記憶しており、嗅覚によって、川の微妙な匂いを嗅ぎ分けているからだと
みられています。
ですが、遠く離れた海から、どうやって母川の近くまで戻ってこられるのだろうか。
これについては、以前はサケの頭部にマグタイトという磁性物質があることから、
「磁気コンパス」を使って母川に戻ると考えられていました。
ところが、新たな実験によって、サケが「目」で母川近くまで戻ってくることが
明らかになりました。
その実験とは、まず産卵のために戻ってきた紅ザケを捕獲し、二つに分けます。
一方のサケの頭には磁気コンパスの機能を弱めるために強力な磁石を埋め込み、
もう一方のサケは網膜を剥離させ、産卵場所から7キロ離れた場所から放流するというもの。
すると、磁石を埋め込んだ方は、迷わず産卵場所まで戻ってきたが、
視力を失ったサケは迷ってしまったといいます。
この実験から、サケは稚魚時代、嗅覚だけでなく、視力によっても、母川をしっかり覚え、
その記憶を頼りに、母川へ戻ってくることがわかったのです。
今も各地で行われている放流事業は、この記憶力を利用したものです。
何しろサケには「川ならどこでもいいか」とか「面倒だし、近場の川で産卵しちゃへ」
という適当さはないのです。
数年後、親になったサケは迷わず戻ってきてくれるのだから、放流すればモトがとれます。
業者にとって、サケの「母川回帰」は、まことに有り難い習性といえるのです。